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第四話 長兵衛狐

「忠兵衛門さ、相変わらずお精が出るのぅ。」
「ああ、毎日暑いことよのぅ。こう続いてはやり切れんて…。」
「やあっと雨が降らんで、田んぼが干(ひ)上がってしまいそうだが…。」
「雨のことは、そう心配せんでもええが。あさってあたりは大夕立があるで…。」
「忠兵衛門さが、そう言ってくれるんなら、大安心だ。」
 大足村の忠兵衛門さは、渋紙色のしわ深い顔に、まっ白な歯をのぞかせて、鍬(くわ)を肩にしたまま「にっ」と笑(え)みかけるのでした。
 今日も、かれは畑へ行く。毎日、雨が降っても、風が吹いても、必ず出かけるのです。しかも、かれの腰には、色あせたふろしき包みが一つ、ぶらんぶらんと下げられています。
 豊石神社の西を右に折れ、狭い坂道を登っていくと、右手の稲荷(いなり)堂の裏が小高い竹やぶになっています。その上が、かれの畑なのです。
 ところが忠左衛門さは、竹やぶのそばで腰をおろしてしまい、やおら、例のふろしき包みを開きにかかります。
 「ほいほい長兵衛さんや、ご馳走(ちそう)を持ってきたでな。」
 すると、竹やぶの奥から、年老いた一匹の狐がのろのろと出てくると、油揚げの弁当をぺちゃぺちゃと食べ始めました。
 忠左衛門さは、黙って、ほほ杖(づえ)をついたまま、この老狐が、弁当をきれいに平(たいら)げてしまうのを眺(なが)めています。そして、空(から)の弁当箱は、再びかれの腰にぶら下げられて、「どっこいしょ」と、畑への道をたどられるのでした。
 かれが長兵衛と仲良しになってから、もう何年もたちます。そして――、かれの生活がこのごろ変わりつつありました。
 かれの予言が当たりだしたのです。
 お天気のこと、失(う)せ物のこと、方角の良し悪(あ)しから、はては井戸堀りのことにいたるまで、どんな事でも、かれの予言がぴたりと的中するようになってきました。
 そのため、かれの屋敷には、近在の尋ね人が、わんさと押しかけてくるようになりました。ですから、忠左衛門さは、長兵衛狐にお弁当や菓子をやるだけで、畑仕事には出かけない日が多くなります。
 でもかれは、日課となっている竹やぶもうでを欠かしたことはありませんでした――。それは、忠左衛門さ以外がいくら呼んでも、長兵衛狐が竹やぶの奥から出てこなかったからです。
 人々は、かれの不思議な神通力(じんつうりょく)を、きっと長兵衛狐の恩返しに違いないとうわさし合いました。そして、忠左衛門さの死後、竹やぶの前にりっぱな稲荷堂が建てられ、五穀(ごこく)豊穣(ほうじょう)、商売繁盛、渡海(とかい)安全に霊験(れいげん)あらたかな神さまとして、近在の人々の尊崇を受けるようになりました。

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